自転車通勤について調べ始めると、SNSなどで「片道20kmを毎日走っています」「30kmでも慣れれば余裕」といったストイックな声を目にすることがあります。
これから頑張ってみようかなと思っている初心者からすると、いきなりハードルの高さを感じてしまいそうですが、ちょっと待ってください。大丈夫です。
その人たちは目的地でフルタイムの仕事をこなしているでしょうか。疲れ果てて帰宅して、翌朝また同じ距離を走っているでしょうか。もちろん中にはそういう猛者もいるかもしれませんが、ごく少数派だと思います。そもそも運動経験や身体能力、通勤ルートや車種や装備、年齢や体格や仕事内容などは人それぞれ。前提となる条件が同じでない以上、他人と比べる意味はありません。無理は禁物。身体は資本です。
「走れる距離」と「毎日続けられる距離」は、まったく別の話。
私たちが考えているのは「競技」ではなく「通勤」です。健全な習慣化を目指す為に自分に合った適正距離をしっかりと見極めることが大事です。
前提とする私のしょうもないスペックはこちら
- 高校生のアルバイト時代から始まりアラフォーに至るまで自転車通勤を継続
- 高校生以降まともなスポーツ経験は無し
- 昔から姿勢が悪くここ数年で肩や膝のトラブルが目立ってきた
- アパレル企業の事務職(一日のほとんどがデスクワーク)
快適さと継続の分岐点は「5km」と「10km」
自転車通勤を15年以上続けてきた経験から感じた結論として、
- ママチャリやクロスバイクで何も考えずに楽に走れるのは、片道5km(約20分)まで。
- 適切な車体選びと身体のケアがあるならば、片道10km(約40分)まで。
ここから先は一気にハードルが上がります。
年齢や運動習慣の有無などの条件によっても変わってきますが、大まかな目安としてこの2パターンを頭に入れておくと良いかもしれません。この辺りが、自転車通勤における「続けられる/続けられない」の分岐点として、多くの人に言えるのではないかと思います。
車体の重さが疲労を蓄積させる
これまでの自転車通勤歴の中で、ママチャリからミニベロ、クロスバイク、そして現在のロードバイクへと乗り継いできました。乗り換えるたびに思い知ったのが「車体の重さ」が疲労に与える影響の大きさです。
通勤距離が片道5kmだった頃は、クロモリ素材の頑丈なクロスバイクで十分でした。むしろ距離が短すぎて、雨の日にレインウェアを着脱する手間のほうが面倒に感じていたくらいです。5kmなら、車体のスペックはほぼ関係ありません。
しかし、片道が10kmになった途端、そのクロモリの重さが一気に負担になりました。
朝はともかく帰りがだるい。定時まで働いた後の脚にズッシリと重さがのしかかってくる感じ。決して無理な訳ではないですが、僅かでもネガティブな意識が湧いた時点で、適正ではないということだったのでしょう。
今は問題なくても、このちょっとした意識が日々積み重なってくると、きっと何処かで続かなくなるだろうと思い、元々ちょっと興味もあったロードバイクに乗り換えることになりました。
翌朝に疲れを残さないラインの見極め方
なぜ10kmを境にキツくなるのか。
10kmを走ると、往復で約1時間半の有酸素運動になります。このくらいの運動量になると、「一晩の睡眠でリセットできるか」が重要になってきます。車体が重ければ筋力への負荷が増し、寝るだけでは疲労が抜けきらない。翌朝に蓄積した疲れを引きずったまま、また走り出すことになる。これが挫折へ向かう連鎖の始まりです。
ここに「若さ」があれば負担も疲労もねじ伏せられますが、身体の節々にトラブルを抱える年代ともなると、そんな呑気な事も言っていられません。毎日のダメージ管理は切実です。
10kmを超えるなら、「機材で負荷を下げる(軽い車体にする)」か「身体のセルフケアを習慣にする」か、どちらかが不可欠です。どちらもないまま根性だけで続けようとすると、おそらく長続きはしません。
あなたの距離に合わせた車体選び
片道5km圏内なら、手持ちのクロスバイクやミニベロで十分です。ママチャリでもほぼ問題ありません。車体よりも服装や荷物の工夫のほうが、快適さに直結します。
片道10km圏内なら、軽めのクロスバイクかロードバイクを推奨します。10kmあたりから、車体の軽さは「楽に走れるかどうか」に直結してきます。今持っているクロスバイクが重いなと感じているなら、乗り換えを検討するのもアリかもしれません。
「週5日完璧に走る」をゴールにしない
新しく自転車を買って、10kmの通勤を毎日こなそうとして数ヶ月で燃え尽きる人を、これまで何人か見てきました。
「毎週○曜日と雨予報の日は公共交通機関を使う」というような、いざというときの逃げ道を最初から作っておくことも、長く続けるためのコツだと思っています。
背伸びして「毎日完璧に走る」を目指すのではなく「行ける日だけ行く」くらいのゆるさでも別に良いと思います。自転車通勤は義務じゃありません。
まずは休日に、会社まで走ってみる
平日の朝にぶっつけ本番で始めるのは、リスクが高すぎます。
次の休日に、普段と同じくらいの荷物を持って、会社までの道を往復してみてください。時間を測りながら、できれば心拍数も意識しながら。
到着したときの疲れ具合、帰り道の脚の感覚。それが、あなたの身体が教えてくれる一番リアルな答えになります。ネットの「20km余裕」よりよほど信頼できる情報源です。
自宅から会社までのルートは人それぞれ。若さも運動習慣も人それぞれです。乗っている自転車も違えば、持ち運ぶ荷物だって違います。
一概にこうとは言えませんが、もし今の通勤距離が5km~10kmという人は、幸運にも、自転車通勤における「適正距離」という条件を既にクリアしているとも言えます。前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
